PV制作後記

 
 2012年新作映画ベスト10 PV (2012 My Favorite Movie Trailers Mashup)


2012年に観た新作映画のマイベスト10(12本)の予告編からPV(まあ別にプロモートしてるわけではないのだけれど)を作った。

いろいろあってごにょごにょして一旦はうまくいったんだけれどもまたいろいろあって結局のところ今はパソコンからしか見れないようだ。スマートフォンiPadなどの携帯タブレット端末からは見れない模様。

画質が思ったより悪い。メモリが足りないのか全編をmp4にエンコードできず、いったん未圧縮でavi形式にしてからmp4にエンコードしているのだが、その過程でなにかしら見落としているものがあって画質が落ちているのだと思う。たぶんもっと賢いやり方があるのだろうけど勉強不足でこの方法しか思いつかない。勉強する気もあまりない。少しはある。でもやらない。

あちらの方ではいろいろと切り貼りして詰め込んでうまいことまとめることをMashupというようだ。マッシュアップ。日本でも言うのかな。言うんだろうな。

もともとPV(というかマッシュアップ)を作ろうと思ったのは2012年公開の映画の予告をまとめた1本の動画を見たからだった。


 
 2012 Movie Trailer Mashup


素晴らしい。引き込まれる。スピード感があるし見ていて飽きない。BGMに合わせたグルーヴのある編集だ。

なんだか映画みたいな動画。

もちろん映画から作った動画だ。だが一つ一つのカットは全く異なる作品から切り取られた関連のないシーンである。元の作品の中で配置されたその場所においてのみ、その意味を発揮するはずのものだ。それらをただつなぎ合わせただけ。それなのにこの動画を見ると、連続するカットの流れに何か意味があるかのように感じられる。ひとつの物語のようなものとして目に映る。

何かしらの意図をもって編集しているのだとは思う。それはもちろんだ。ランダムに並べているわけではないことはわかる。

大きいのはBGMなのだと思う。

背景に流れる音楽が意味を持たせる。無関係なカットの連なりを統一する「テーマ」のようなものを与えている。

3曲のBGMが使われている。ひとつの曲の中に大きな「テーマ」があり、1曲目、2曲目、3曲目と曲の変わり目で「テーマ」が変わる。曲の移り変わりが「テーマ」の移り変わりとなる。

「テーマ」という言葉は非常にあいまいだ。あまり使いたくはない。口に出そうとすると救いようのないほど陳腐で滑稽な中身の全くない言葉になりがちだ。けれど他に思いつかない。

例えば1曲目の「テーマ」として思いつくのは「ダークネス」「始まり」。2曲目は「爆発」「疾走」。3曲目は「静寂」「神秘」「終わり」…………。

……こんな言葉、頭の中に浮かべるだけでも十分赤面モノなのに、実際にキーを叩いて文字として挿入すると恥ずかしさともどかしさと切なさでキーボードを叩き壊したくなる。小学生に戻ったかのような不自由感。中二のような病気感。

 「単なる語彙不足だよ、それ。成長してないってこと。感受性のかけらもないのね」

うるせえくそくらえだこんちきしょうめ。「テーマ」というものは概してそういうものだ。具体を排す。抽象。ゆえに軽薄。だからこそ、そこから広がっていくことができる、と言うことだってできる。

BGMが大きな(抽象的な)「テーマ」を与え、その「テーマ」の上に具体性の核となる各カットが配置されている。見るものはそこに何らかの「意味」を見出す。いや、わからない。少なくとも自分の場合はそうだった、というか、そうなのではないかと考えている。

関連のないカットを並べたものを音楽で強引にまとめた、とも言えるかもしれない。乱暴だけど。

だから自分もそうやって作った。曲を選ぶ。曲の並びを決める。曲のテーマに合わせてカットを選び、並べる。おしまい。

1曲目は『桐島、部活やめるってよ』の主題歌『陽はまた昇る』(高橋優)、2曲目は『人生はビギナーズ』の挿入歌、3曲目は『宇宙人ポール』の "All Over The World" (ELO)。それぞれの曲にどんな「テーマ」を考えていたのかはそれこそ恥ずかしくて言えない。たぶん見ればわかるんだろうけど。

曲の上にカットを並べるだけのものを作るのに結局3ヶ月かかった。昨年末のマイベスト10発表時までに完成させるはずだった。もちろん3ヶ月の中で作業に当てた時間はほんの少しだけれど。難しかった。結果、できたものにあまり満足していない。でもとりあえず形になったことはなったので一区切りのつもりでアップした(一区切り、とか言いながら「もういいや」という気もしてる)。


たった5分のこんなちゃちなマッシュアップを作るのにも頭を悩ませるのにましてや映画の編集なんて……。

去年観たウディ・アレンのドキュメンタリーで一番あちら側が面白そうだったのは編集の作業だ。撮影した膨大なカットの切り貼り。楽しそう。でも胃に穴あいて頭爆発しそう。でも楽しそう。

「まさかだけど、君はあんなんで『編集』をした気になっているわけ?」

まさか。そんなこと思ってはいないよ。でも自分の好きなものとどこかでつながっているような気はしているよ、ほんの少しだけ。ね、前田君。

「こないだ酒飲みながら自分で切り貼りした映像見て一人キャッキャ言ってたけどアレは何?」

あ、あれは、ええとその……なんといいますか、

「ナルなのね」

ま、まさか。そんなことは、ない、です。ジョーーイ! はい、次は馬の話をします。2012年新作映画マイベスト10シリーズです。