出生を届け出た|ロックマンX

そして「父」になる。

小学生のときにロックマンXをよくプレイしていて、あれから20年近く経った今でもBGMを脳内再生することができる。

 

寝付きの悪い夜があった。

 

しかも、なぜかロックマンXのあるステージの曲が脳内でループしており、居ても立ってもいられなくなり、検索して聴いて、より眠れなくなった。 


[BGM] [SFC] ロックマンX [Megaman X]

その夜から、ロックマンXのBGMの脳内再生回数が異様な高レートを維持する日が続いた。

 

また別のある夜、ロックマンXのBGMが頭に鳴り響く中、破水したかもしれない、と実家へ帰っている妻から連絡が来る。

 

その翌日には「息子」が産まれた。

 

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産まれたばかりの「息子」の体重を助産師さんが測り、私はそれを横で眺めている。ジタバタと手足を動かしながら身長を測られるのを見守る。

 

諸々が終わると、助産師さんは「息子」を私の腕に預けてくれた。

 

「おとなしくていい子だねえ」

 

助産師さんは言う。私は「息子」の顔を覗き込む。

 

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出産のときだけは付き添わせてもらったのだが、インフルエンザ大流行のため、入院している病院では面会が一切禁止だという。 

 

夫であり「父」である私も退院までは一切会えない。面会で気を使わずに済むから、むしろ楽だと妻は言っていた。

 

退院した日に妻の実家で、親子での初めての夜を過ごす。

 

目が「息子」から離れない。

 

眠っている。顔をしかめる。目をあけてこちらを見つめる。

眠っている。口を大きく開ける。目をあけてどこかを見つめる。

眠っている。そのまま声を上げてまた眠る。

 

表情を豊かに変えながら、手足をばたつかせながら、声を上げ、生きている。

 

「息子」は「生きている」

 

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 妻は毎日なにかある度に「息子」の写真を送ってくれる。

 

それを一つずつ眺める。

 

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区役所へ行ってきた。

 

手続きを終えると、住民票コード通知票というものを渡される。

 

「息子」の名前が活字で記されていた。

 

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自分の中にこれまでにない感情が芽生えている。

 

この十日ほどでそれが少しずつ、けれど確実にはっきりとしてきた。

 

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息子になり、父になる。